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表1.1.4−1 短波海洋レーダーの測定精度例(14)

 

短波海洋レーダーを普及するには、今後次のような問題に取り組む必要があるとされる。

・観測海域に島等がある場合の影響。

・波浪による電波の一次散乱、二次散乱の理論的限界が不明。

・Barrickの理論に比肩できるようなものが無くやや不安がある。

・理論の限界を示す実験がない。

・実用化のための長期間にわたる実証的な実験例が無い。

 

このように問題を抱えてはいるが、完全無欠なシステムは望外なものと考えると、現時点では不完全であっても、本システムに必要な情報を取得できる可能性があれば、積極的な利用を検討したいシステムである。

 

? 海況(Sea state)の観測について

水上目標探索レーダーの黎明期から目標検出の阻害要因となる海面反射対策が研究され続けてきた。しかしながら、実時間処理で海面反射抑制を効果的に行う手段は未だ無い。

発想を転換し、海面反射を積極的に観測し利用する案がある。IALA(International Association of Lighthouse Authorities)の論文(9)にあるように、海上監視用レーダーによりレーダー設置位置付近の海況(Sea state)を推定することである。このような考え方は、1960年代の後半に日本気象学会の機関誌(8)に函館海洋気象台の「シー・クラッターと波浪」と題して述べられている。

 

Nathanson(10)は、多数の文献資料から、海面に対する接地角度が小さい場合の経験的な基準化平均海面反射係数(単位面積当たりの反射係数:dB/?)を整理して発表している。表1.1.4−2〜表1.1.4−4にNathansonの表の一部から、S,C,X,Kuの周波数帯で水平偏波についてのデータのみを抽出し掲示した。これらの表で空白の部分はNathansonの表でも空白である。また、注釈付の数値も一部にあるが、煩雑なので注記は全て省略した。

表の数値を検討すると、周波数が高く、また海況の数値が大きく(波が荒いほど)、接地角度が大きいほど基準化平均海面反射係数が大きくなることが読みとれる。当然ながら、このことはレーダー映像の観測から経験的に認識している海面反射の性質と整合している。

 

 

 

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